被写体

 数刻後には消え去っている光の存在をまず目が見つけ次いで心が引き寄せられる。そしてカメラと言う器の中に入り込んだ光りがワシのイメージとシンクロして外界に放出される事によってだけ被写体はここで知られる事になる。

 未来永劫、今のこの光に照らされた被写体は見る事が出来ないのだ。

 被写体に注がれる日光も輪郭を揺らす優しい風も濃密な空間に浮かび上がる今だけこの様子が留まってそこに在る。そんな情景の一切がワシの身体の中に入りカメラの中に入りネットの中にも入り込む様は、まるでイメージが感染して行くような印象を持ってしまう。

 ネットに載った被写体を眺めているとまったく淡々と視ていた単なる風景だったはずの撮影時のあの寒々とした鋭角な空気感と、埃にまみれた道端の残雪や背中を丸めて足早に行く中年女性や喫茶店の中から窓ガラスを通して外の冷たさに愛想を尽かしている初老の客の目や、ブロック塀の影からワシを伺っている野良猫などが突然に親しみを持って現れ、実はそれらは町の一部であり同じ生活空間に暮らすワシの一部でも有りうるのだと納得させられてしまう。

 そしてそれらは実はとても美しいのだと知る事になる。

 すると淡い情熱を薄々と感じ、次はそんなようなスナップを撮ってみたいと痛烈に思ってしまう。ワシはそんなことの繰り返しで被写体を得ていたのではないかと思う。このような事があるとあの時、感情の一切合切が無くなってしまった方がどれだけ生きやすいかと言い放ったのを恥じ入り赤面してしまうのだが、感じられる事の破廉恥さを喜ぶべきなのだなぁと思った。

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Commented by トビ at 2015-03-11 09:36 x
素晴らしく抜けのいい市街と連峰、気持ちよいですね〜。遠く薄靄が引いていたり、残雪も多くてまだまだ冷え込みが厳しいのでしょうが、太平洋側ではまず拝めない情緒です。

私はまだ、カメラに収める瞬間の一期一会を存分に味わうほどには至っておりませんけれど、写真を見返したときに撮った前後の時空間をリアルに思い起こす驚きと面白さは、今もって継続していますね。むしろ、写真は単なる思い出しトリガーとして撮っておくような感じ・・・ってなんだか本末転倒かもしれません、ナハハハ。でも、旅行なんかでは絶大な威力を発揮してくれるので助かります。
Commented by ride-t at 2015-03-11 19:56
こんばんは、tobiさん。
これは北陸新幹線開通記念特別ショットですね(笑)ストックなのですが、寒い日の靄がかかった街を撮ろうと山に登ったら、こんなのが見えてきて・・・ラッキーでしたわ。

なんでしょうね被写体を決定づける「モノ」って。好奇心とか興味深さとか、愛すべきものとか・・・感情に訴える何かですかねぇ・・・「カメラに収める一期一会」名言ですなぁ(^―^)
by ride-t | 2015-03-08 10:23 | 写真部 | Trackback | Comments(2)

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